宮野 祐/Miyano Tasuku

CCC Frontier Festival 2025 辺境deアート 個展「パレード」

〈ステートメント①〉
この会場の前の道は浅間神社の参道として、
古くから使われてきた道だ。
また、浅間神社の裏手には
山へと伸びる道が続いている。
山道は山奥に住んでいる人々と
静岡市街地を古くから繋いでいると言う。

これらの道は実際に歩いてみると
浅間神社を挟んで街と山をつなぐ
一本の道のように意識される。
道の途中には、古墳や神社、空襲の慰霊碑が
立ち並んでおり、道が必ずしも
生者だけの空間でないことを
示しているといえよう。

この道は、日常を過ごす人、
神社の参拝者、過去の人、死者
様々な人の往来が記憶されているのだろう。
それは複雑に重なり合う雑踏のように
妄想される。
この雑踏を今回はパレードと呼称して
群像画として出力し展示を構成した。
画面の中には人だけでなく、
人ならざる者や亡霊が絵の具の積層として
折り重なっている。

また、CCC Frontier Festivalは
パフォーマンス表現の祭典として始まり
今期から展示の企画を取り入れたと聞いた。
今回の展示意図はこうした身体表現の現場に
生者だけでなく、死者や亡霊の身体を
参加させることを目的としてもいる。

〈ステートメント②〉
今回の展示ではメインの油彩作品に加え
多くのドローイング作品を制作した。
ドローイングは街の「グリッド」と
人の顔を意識した「円形」を下り重ねて
様々な実験を試みた。
人の顔をはっきりと描いた場合もあれば、
輪郭線としてただの円に還元されている場合もある。
そこには図画工作の造形言語や
様々な先行世代の作家の造形言語が
折り重なっている。
本展は道を往来する者たちだけでなく、
美術に潜む様々な亡霊をも
巻き込んでいるのかもしれない。

会場:リアルフードマーケットあくつ(静岡市葵区馬場町91)
日程:2025年3月21日-3月30日
主催:静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)